後編:高画質・大画面ディスプレーの適性解像度(実務編)

4Kやら8Kやらのディスプレーも出てきた上に、複数モニター連結とか、台湾のクラブにあるらしい幅20mのバカでかいLEDやら、解像度だけはいくらでも大きくなってきている昨今。数十メートルのディスプレイ用映像の制作とか頼まれた時に、単純計算2Kモニターでも横並び10台で19800px.。。とか書き出せん(何時間かかるのか恐ろしい)けど。。。なんてことがしばしば。

そこで気づいたのが、お客さんとの距離があったらそこまで見えないよなー。。。なんて思ったので、昔作った計算式をアレンジしてどこまで鮮明にしたいかの目標解像度/物理的なモニターサイズ/お客さんとの距離/データサイズを算出できる式を作ってみました。

a= 30xy / 2.54z

変数はそれぞれ

a = 必要データサイズ(単位px)
x = 物理的なモニター(ディスプレーサイズ)(単位cm)
y = 目標解像度(ターゲットdpi)
z = お客さんとの距離(単位cm)

下に式ができるまでの工程を書きますがdpiのインチが関わってくる関係上入力単位はお気をつけて。また、変数代入したら自動計算してくれるエクセルデータも下記に置いておきます。“工程どーでもいーよ”って人は一番下までドバーッとスクロールしちゃってください。

公式算出の工程

はじめに

クライアントへの説明とかのため経緯が知りたい人用です。中学レベルの数学の知識でついてこれると思いますが・・・久しぶりにやると一次関数ですら忘れてるもんですね・・・

そもそもの基準点

日本人やギークな人に多い”高スペック信仰”。とはいえ人間の視力には限界があるわけで、顕微鏡や望遠鏡など補助器具を使わない限りは解像度も高ければいいというわけではありません。(8Kテレビはあるけど見てる映像はSD画質とか、4K映像を携帯で見ても・・・意味ないですからね)そんなわけで、今回は印刷業界で使われる解像度300dpi(注1)を基準として使用します。また視認距離、印刷物と見ている人の距離は30cm(注2)を基準とします。なので、以降の計算は300dpiの印刷物を30cm離れたところから見た場合(ちょっと近めに本を持って読書しているときくらい?)を前提に話を進めます。

300dpiとは?

dpi、ちゃんと言うとドット パー インチ。300個のドットが1インチの中に並んでいます、という意味。それ以上細くても通常印刷物を見る距離で見る限りは視認できないと言われている細さです。ただし、もちろん近づいて目を凝らせばより細かいところまで見えてきます。この時のデータサイズ・実寸の関係性はデータサイズ=300実寸inch単位をcmに直すとデータサイズ=300実寸cm/2.54次に、30cmで見た時に300dpiとなることを式にするとdpi/10 = 距離cm試しにさっきの数値を代入すると300dpi/10 = 30cmとなります。

単位をわかりやすくする

ここまでは1インチを基準にしていたので気にならなかったですが、普段あまり使わないし、寸法をインチに直すのはめんどくさい・・・

ということで、欧米圏でもないので使い慣れないインチを追々使いやすいセンチメートルに換算します。1インチ=2.54cmなので・・・

実寸 = 物理的なサイズ(単位 : cm)dpi = dpi距離 = お客さんとの距離(cm)*ここでいう物理的なサイズとは、印刷物/ディスプレーなど実物を定規などで測れる実際のサイズのことです。

  • {dpi*(実寸/2.54)}/10 = 距離を展開
  • dpi*(実寸/25.4) = 距離
  • 300dpi / 30cmの時を試してみる
  • 300*2.54/25.4 = 距離←ここが30になるはず
  • 300*1/10 =30 = 距離

となるのでOKそう。この時点で、

  • 特定サイズに特定ピクセル数の画像を入れた場合どのくらいの距離離れれば300dpiの印刷物を見るのと同等のクォリティーに見えるか
  • お客さんとの距離・印刷サイズに対して300dpiの印刷物同等に見せたい場合の必要ピクセル数
  • 特定のお客さんとの距離で特定ピクセル数の画像が300dpiクオリティーでどのくらいのサイズで印刷/表示できるか

などがわかります。

例えばRetinaディスプレー

aptitude-resolution-of-huge-display01_01
aptitude-resolution-of-huge-display01_02
  • オフィシャルサイトの情報を元に解像度220dpi・幅35.89(外径)で考えてみると・・・dpi実寸/25.4 = 距離 に下記変数を代入
  • 実寸 = 幅35.89(単位 : cm)dpi = 220dpi距離 = 今回求めるユーザーとの距離(cm)
  • 220*35.89/25.4 = 距離
  • 距離 = 33.69 cm(小数点第3位以下切り捨て)

となり、33.36cmディスプレーから離れた場合、解像度300dpiの場合と同等の見た目で表示されるということになります。なお、論理解像度というややこしい話もあるんですがそれは、まぁそのうちに・・・。

とりあえず300dpi基準でのそれぞれの数字がわかるようになってところで、本題の大型ディスプレーの場合の適正解像度についてはまた次回。

エクセルでの自動計算表は下記より。適性解像度計算表のダウンロードはこちらから

注釈説明

  1. 350dpiって話もありますが計算上楽なので今回は300dpiを基準点としています。
  2. 解像度300dpiの適正解像度の印刷物を見る際の距離のことです。パンフレットを手に持って見るとかそういうことですので20cmでも平気でしょうけど、300dpiと合わせて計算するときに3の倍数の方が楽かな?と思い設定。さすがに10cmだと近すぎる気もするし・・・
 
 

Sponsored Link